「泥の河」  宮本輝

宮本輝氏の代表作の一つです。個人的には最高傑作だと思っています。戦後のまだまだ暗い時代を生きる市井の人々の姿を少年の目を通して描いた作品です。ドラマチックナ展開があるわけではありませんが、心にしみる作品です。映画化もされており中川運河で撮影がされたことでも有名です。映画もお薦めします。

「日の名残り」 カズオ・イシグロ

 2017年にノーベル文学賞を受賞して広く知られることになった方です。約30年前に読んで、不思議な感覚になったことを覚えています。特別な仕掛けがある小説ではありませんが、読んだ後に何も残らない作品でした。その後十数回読みなおしましたが、やはり何も残りませんでした。

 「本当の傑作は読んだ後に何も残さない」と、ある小説家がおっしゃっておられましたが、その意味がわかった小説でした。ぜひご一読ください。

「書物巡礼記」 森本哲郎

 今年の愛知県公立高校入試に森本哲郎氏の文章が出題されました。中学生にもとても読みやすい文章で、入試には頻出の文章です。今回紹介する本は「書物巡礼記」(文化出版局)です。

 「趣味は?」と問われて「読書と釣り」と答えるのが常なのですが、「読書というのはなんとなく都合のよい答えのように感じられがちです。しかし本当に「読書」を趣味とするものとしては、この「書物巡礼記」こそ「読書」好きの心の内を見事に代弁してくれていると思います。

 「読書」とは単に「本を読む」という行為ではないこと、読みたいと思った本は手に入れないと気がすまないこと、一冊の本が次から次へと仲間を呼びよせるように広がりをもつこと、など本当に「読書」を趣味とすることの幸せと素晴らしさを語りつくしてくれます。

 「読書」好きでなくともご一読いただくと、きっとその素晴らしさの一端に触れてもらえるものと思います。

 現在は古書でしか入手できませんが、比較的安価で入手できます。

中島 敦 「名人伝」

 以前は高校の教科書にも必ずと言っていいほど掲載されていたのですが、最近はほとんど見なくなりました。同じ作者の「山月記」はほぼ全社の「現代文」の教科書に掲載されており、高校2・3年生で学習します。「名人伝」が消えていった理由はわかりませんが、私は中島敦の最高傑作だと思います。

 中島敦の文章は漢文を基調としているために少しわかりづらい部分があるかもしれませんが、その格調高く流麗な文章は何度も読むうちに心に深く刻まれるものです。

 さて「名人伝」は「紀昌」という男が弓の名人になるために修行を重ねる話です。なかには少々荒唐無稽とも思える部分がありますが、結末を知れば納得のいくものでしょう。

 作品の後半の「至為は為す無く、至言は言を去り、至射は射ることなし」という一節がもつ深い意味を味わってください。

「中国小説集」 (ランダムハウス講談社文庫)が脚注がていねいで読みやすいと思います。ただ現在は古書でしか入手できませんので、いつでも読みに来てください。

青林塾ではいつでも読書をしていただけるように本を準備してあります。

いつでも読みに来てください。